監督未経験のピルロ新監督を迎えたユベントスですが、チームの方向性が不鮮明な状況となっています。Bチーム(= U-23)の監督就任会見時に残した発言から、チーム作りの方向性と初期フォーメーションについて考察することにしましょう。
■ Bチームの監督だった場合は 4-3-3 が濃厚
まず、ピルロ監督が公にコメントを残したBチームの監督就任会見での主な発言は次のとおりです。
- 上手くプレーし、試合を支配し、常に勝利を目指さなければならない
- ユベントスでプレーする意味とトップチームに到達するために必要な自己犠牲を説明する
- システムは重要ではない。選手たちに依存する
- 選手たちを最大限引き出さなければならない
- 適切な選手が適切なポジションにいてスペースを占拠することが重要
- 実装する試合のディシプリン(= 規律)がある
根幹にあるのは「自身の経験」でしょう。ピルロ監督は「トップ下の選手」だったものの、相手選手のプレッシャーに耐えられるだけのフィジカルはなく、「レジスタ」の位置にコンバート。そこで才能を発揮しました。
この実体験を持った指揮官であるため、選手が自らの能力を最大限発揮することができないポジションでの起用を強いることには消極的であると考えられます。
また、Bチームの役割は「トップチームに選手を送り出すこと」ですから、トップチームと同じフォーメーションを採用することが合理的です。
就任した当時はサッリ監督でしたから、Bチームの場合は「4-3-3 でのチーム作り」に着手していたことでしょう。
■ トップチームでも 4-3-3 で選手を査定することから着手するはず
ピルロ監督はフォーメーションに固執する発言をしていないため、選手や対戦相手に応じてシステムを使い分けると思われます。
ただ、これはシーズン中の運用方針であり、実際には「チーム作り」を行う上で必要となる基本システムは不可欠です。そのシステムは「4-3-3」が採用されることでしょう。
理由は 4-3-3 がポゼッションを行う上でバランスが良く、他のシステムにも可変させやすいからです。まずは「ピルロ監督による査定」が行われ、その後にメインとなるシステムが定まることになると考えられます。
Bチームを率いていた場合との最大の違いは「システムを見切るまでの時間」です。トップチームはより結果が問われるため、4-3-3 が機能しないなら短期で見切りを付けることでしょう。
システムに固執しすぎるとサッリ監督の二の舞になります。ただ、ピルロ監督が行った唯一の記者会見では『アッレグリ監督のチーム作り』を匂わせるものもありました。
「ボールを持って試合を支配する」という部分では異なりますが、「選手を柔軟に起用する」という部分は似ています。そのため、“軸となる選手” を上手く見極め、チームの骨格を作った上で熟成させられるかがポイントになるでしょう。
■ ピルロ監督の要求水準を満たせる『4番』の有無が鍵
ボールを保持するポゼッション型のチームを作る場合、重要となるのは「中盤で攻撃の組み立てを担う『4番』が監督からの要求を満たせるか」です。ただ、1年目はそうならない可能性の方が高いため、妥協が重要になります。
ピルロ監督は現役時代に『4番』として実績を残した選手ですから、『理想の4番像』があるでしょう。「この『(ピルロ監督が求める)理想の4番像』をピッチ上で体現する選手がユベントスに在籍しているか」が問題なのです。
サッリ監督はピアニッチ選手を起用しましたが、要求内容を完全には満たせず苦労しました。ミランを解任されたジャンパオロ監督も同様で、ベナセル選手を上手く活かすことはできませんでした。
要するに、『ピルロ監督が理想とする4番』と『ユベントスに所属する MF が体現できる4番』には少なからず “ギャップ” が存在するのです。
これをどう解決するかが監督の手腕の見せ所でしょう。選手補強は時期と予算が限られているため、シーズン中はどこかで「妥協」をしながら「結果」を出すことが求められることになります。
ピルロ監督がどのようにチーム作りを進めて行くのかに注目です。