インテルとのイタリア・ダービーを制して首位に浮上したユベントスですが、改善点があることは事実です。その1つである「セットプレーでの守備に脆さが生じたこと」にスポットを当てることにしましょう。
■ サッリ監督のスタイルは純ゾーンディフェンス
2019/20 シーズンからユベントスの指揮官に就任したサッリ監督がセットプレー時の守備で導入しているのは「純ゾーンディフェンス」です。守り方はアトレティコ戦で見られた形が基本形となっています。
- ゴールエリアのラインに沿って5選手を配置
- DF 起用の4選手+1選手
- ラインに平行するように等間隔で並ぶことが基本
- CK のキッカーにプレッシャーをかける1選手
- ニアポストをケアする1選手
- ペナルティエリア内に3選手
- 厳格なポジション指定なし
- 上図のように斜めに配置されることも
ゾーンディフェンスの欠点は「 “空中戦に弱い選手” や “注意が薄れているゾーン” を狙い撃ちされると、失点されるリスクが高くなること」です。
具体的には「GK と ゴールエリアラインに並ぶ DF の間」と「ゴールエリアラインの外側 1〜2m」の2点です。前者を狙う場合は速いクロスをニアに入れ、後者は落とすクロスで勝負をすれば、得点を感じさせることは可能と言えるでしょう。
■ アッレグリ前監督は「マンツーマンとゾーンの混合型」
セットプレーの守備でも安定感があった前任者(= アッレグリ監督)がどのような守備体系を採用していたかと言いますと、「マンツーマンとゾーンの混合型」でした。
- ガードストーン: 2選手
- キッカーの邪魔をする → ディバラ
- ニアサイドを封鎖する → マンジュキッチ
- 相手の空中戦要員をマンツーマンでマーク: 4〜5選手
- 空中戦の強い相手選手を上から順に張り付くことが役割
- CB の2選手、MF の1選手、A・サンドロ、ロナウドが基本的に担当
- クリアボールの回収とカウンター要員: 3選手
マンツーマンディフェンスの欠点は「マークする相手選手に振り切られると失点のリスクが高くなること」です。
ただ、「グラウンダーのクロス」と「ニア(でのフリック)を狙った速いクロス」はガードストーンとして配置した2選手が跳ね返すため、ボールが抜けて来る場所にはある程度の限定が可能でした。
だから、守る側が優位に立つ場面が多い印象が残ったのです。
■ ゾーンディフェンスでは「スタンディングジャンプ」になりがちのため、高さは相対的に不足する
サッリ監督が採用している純ゾーンディフェンスによる守備は「適切なポジショニング」という強みがあります。ただ、セットプレーの守備という特定の条件下では “強み” が発揮しにくいという問題点があるのです。
- 攻撃側は相手の陣形を確認した上で “任意のタイミング” での試合再開が可能
- 守備側は基本的に後手に回る
- 助走ジャンプをスタンディングジャンプで上回るのは困難
ゾーンディフェンスは「適切なポジションに先回りすること」が可能ですが、その強さを発揮できるのは「流れの中」という制限が付きます。なぜなら、セットプレーでの守備においてはゾーンディフェンスが最適解とは言えない状況が発生するからです。
特に、「助走なしのジャンプ」で「助走ありのジャンプ」を防ぐことを要求される状況が発生しやすいコーナーキックの守備時には “危ない場面” が散見されるようになるでしょう。
チャンピオンズリーグの獲得を本気で狙うなら、決勝ラウンド以降に対戦するチームには「素晴らしいキッカー」と「空中戦に強い選手」の双方を兼ね添えていることが当たり前であり、セットプレーに弱点を抱えたままであることが致命傷となる恐れがあります。
シーズン前半戦の間に危ない場面を作られる回数を減らす修正をサッリ監督が施すことができるのかに注目です。