4月27日に行われたインテルとのイタリア・ダービー後にアッレグリ監督とダニエレ・アダーニ氏による口論が発生しました。現在も燻り続けていますので状況を紹介します。
1:論争の時系列
アッレグリ監督とアダーニ氏による論争が起きた件に対する時系列は次のとおりです。
- インテル対ユベントス戦が 1-1 で終了する
- アッレグリ監督が試合中継をした『DAZN』のインタビューを受ける
- アッレグリ監督が『スカイ・イタリア』の取材を受けた際、スタジオ解説者のアダーニ氏と論争が発生
- 取材を打ち切り、ミックスゾーンでの取材を拒否する
論争の口火を切ったのはアダーニ氏です。アダーニ氏はフィオレンティーナやインテルでプレーした DF で、イタリア代表にも選出された経験を持つ「スカイの人気解説員」です。
批判は「内容が悪い。ネガティブなアプローチ」というもので、この発言にアッレグリ監督が反論。アダーニ氏が再反論を試みたところ、アッレグリ監督から「黙れ、私が話している」と一刀両断され、“泣き所” を突かれる形となりました。
2:アッレグリ監督の “逆鱗” とアダーニ氏の “泣き所”
今回の論争が起きた原因は「アダーニ氏がアッレグリ監督の “逆鱗” に触れたから」です。アッレグリ監督は『現実主義』であり、「自分の采配」や「残した結果」に強烈な自負を持っています。
過去にはアリーゴ・サッキ氏からの「アッレグリのサッカーはつまらない」との批判に「エンターテイメントを求めるならサーカスに行け」と反論し、ボヌッチ選手からの交代采配の注文には「黙れ」と試合中に怒鳴りつけているのです。
アッレグリ監督はスクデットを6度制しており、これを上回るのはトラパットーニ氏の7度だけです。監督として残している実績は現時点でも「史上最高」に近いものです。“言いがかり” を付けられる理由はないと言えるでしょう。
しかし、解説者のアダーニ氏は「内容が悪い」と論評しました。これに対し、アッレグリ監督はアダーニ氏の “泣き所” を突く形で畳み掛けたのです。
実は『スカイ・イタリア』の解説者はプロコーチのライセンスを持っています。つまり、アダーニ氏は「監督ライセンスは保持しているが、監督の実績はゼロ」なのです。実績のない “ペーパー監督” が語る理想論など、現場の第一線にいる現役監督には相手にされないでしょう。
なぜなら、「あなたの理想論が正しいことは “あなたが” 監督として証明すべき」と返されるからです。これに反論できない時点でアダーニ氏の「敗け」は決しているのです。
3:アッレグリ監督の意見を聞き出したいなら、建設的な議論に持ち込むべきだった
アッレグリ監督のチームが「自陣からのビルドアップ」に苦労していることは事実ですし、「内容が悪い」と抽象的に批判するのではなく、具体的で建設的な批判をするべきだったと言えるでしょう。
試合翌日に出演した『RAI』の番組でもそのように発言していたからです。批判するなら、次のように具体的にすべきです。
- 自陣からのビルドアップはパターン化した方が効率的に持ち上がれるのでは?
- そうしない・できない理由は?
- パターン化しない場合の対応策は?
- カウンター守備が課題とのことだが、残す人数が足りていないのでは?
- CB の2人とピアニッチでは足りないと思うが?
スペイン代表でも4人ですよ
- CB の2人とピアニッチでは足りないと思うが?
上述の点を指摘すれば、「議論」はできるでしょう。ただ、「結論」を押し付ける形になれば、「討論」になることは目に見ています。
討論になった場合は「監督としての実績」が抜きん出ているアッレグリ監督の論理が圧倒的に優位です。「あなたの理論が正しいなら、ピッチ上でアヤックスのような形で示せるはずだ」と外野からも言われてしまうからです。
メンツを潰された形になっているアダーニ氏は「敬意を欠いている」と批判していますが、アッレグリ監督への敬意を欠いた批判をしたことが論争の発端であることを忘れてしまっています。
アリーゴ・サッキ氏ですら相手にされなかった現状でアダーニ氏の助太刀に加わる識者はいないでしょう。なぜなら、返り討ちにされる可能性が高いからです。
この件はアダーニ氏が新たな火種を供給しなければ、鎮火へと向かうはずです。一過性のゴシップとして世間から飽きられることになるでしょう。