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コラム:“帯に短し襷に長し” の状態にあるユベントスが組織として機能したアトレティコに歯が立たないのは当然の結果

 2018/19 UEFA チャンピオンズリーグ・ラウンド16のアトレティコ・マドリード対ユベントスは「アトレティコの完勝」という形でファーストレグを終えました。2-0 と結果になった要因について考察することにしましょう。

画像:アトレティコに敗れたユベントスのアッレグリ監督
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今のユベントスは骨格となる『ゲームモデル』に “軋み” が生じている

 サッカークラブの根幹となるのは「クラブのアイデンティティー」、「参加するコンペティションの特徴」、「監督の志向」などによって作り出される『ゲームモデル』です。これをユベントスに当てはめると次のようになるでしょう。

  • 全員が「チームの勝利」のために “最後まで” 闘い抜くこと
    • クラブの標語が『Fino Alla Fine (= 最後まで)』
    • ティフォージも “ファイター” に惜しみない拍手を送る
  • 現在のサッカーでは相手が陣形を整える前に行動することが重要
    • 守備陣形を整えられるとゴールの可能性は極端に低下する
    • ビルドアップに適した陣形を敷いた相手からのボール奪取は困難
  • アッレグリ監督は技術を高く評価する現実主義者

 ユベントスは伝統的に “闘将” が支持されるチームで、ハードワークを惜しみなくする選手がティフォージの人気者になります。また、アッレグリ監督も現実主義に基づいた采配を行う指揮官であり、人選的な問題があるとは言えないでしょう。

 ただ、現代サッカーの潮流を現実的に捉えると、チーム編成的に無理が生じているのです。これが “軋み” の原因であり、問題がアトレティコ戦で白日の下にさらされることになったのです。

 

『ポジショナルプレー』か『堅守速攻』のどちらに比重を置いたチームなのかを鮮明することが重要

 セリエAの舞台で結果を残すのであれば、ユベントスの現状で十分です。なぜなら、クラブの資金力が抜きん出ているため、「ユーヴェの控え選手が他のチームでは主力」という状態にあるからです。

 しかし、チャンピオンズリーグではそうは問屋が卸しません。したがって、クラブの方向性を明確に定める必要があるのです。

 選択肢は『ポジショナルプレー』か『堅守速攻』の2つです。どちらかに比重を置いたチーム作りをすることが重要になります。その理由は「中途半端な状態」だと、それによって生じる “弱点” をチャンピオンズリーグの優勝候補に突かれて敗退に追い込まれる可能性が高くなるからです。

 では、具体例を示してユベントスの現状を確認することにしましょう。

 

「ロナウド」と「ボヌッチ」を両立させることは無理筋という現実

 ユベントスが機能不全を起こしている原因は「システム的に両立させれない選手を無理に起用しているから」です。

  • 『ポジショナルプレー』
    • ポゼッションを重視し、相手陣内ほど威力増
    • 例:レアル、バルサ、シティ、(サッリ監督の)ナポリ
    • 攻:足元の技術(とドリブル能力)
    • 守:デュエルの強さ(と CB はスペースのカバー能力)
  • 『堅守速攻』
    • 守備を重視し、自陣でブロックを築くと威力絶大
    • 例:アトレティコ
    • 攻:献身性の高い FW (ポストプレーとロングカウンターは必須)
    • 守:スペースを消し続ける集中力

 ロナウド選手は『ポジショナルプレー』を志向するポゼッション型のチームで大きな仕事をし続けてくれる選手です。これはレアル・マドリードで残してきた実績が示していると言えるでしょう。

 ところが、このゲームモデルを今のユベントスでやろうとすると、CB が問題になります。なぜなら、レギュラー陣(= ボヌッチとキエッリーニ)がスピード不足だからです。「カウンターを受けた際に振り切られる可能性が高い」と判断されているから、最終ラインが低めに設定されているのです。

 逆に、『堅守速攻』を選択すると、守備のラインが低くなるため現在のレギュラー CB が抱える “脆弱性” は露呈しません。ただ、攻撃ではロングカウンターの割合が増加するため、FW 陣は「走力が必須」となります。

 この場合、ロナウド選手は適任者ではありません。テベス選手やモラタ選手という「1人でシュートまで持ち込める献身性の高い CF」が理想系になってしまうからです。

 

20日で堅牢なアトレティコの守備網を破れるとは考えにくい

 代表チームのレベルでは「守備を固められると得点することは困難」と言えるでしょう。しかし、クラブレベルでは「ドリブルで突破できる選手」や「コンビネーション」で『堅守』をこじ開ける能力を持ったチームが君臨しているのです。

 ユベントスのフロント陣が攻撃に重点を置いた補強戦略を行っているのはトレンドを反映したものであり、方向性は間違いではありません。

 ただ、方針転換を図るのであれば、攻撃陣と並行して守備陣(特にセンターバック)のテコ入れも不可避です。ところが、『ポジショナルプレー』に適した主力 CB の補強・育成が進んでいないのがユベントスの実情です。

 また、『ポジショナルプレー』をベースにして勝ち切るためには相手の守備ブロックをこじ開けるための “型” を確立させることが必須なのですが、これも未完成のままです。

 「守備力が高いとは言えないロゴリゴ選手」と「イエローを1枚受けたトーマス選手」のボランチコンビを崩せなかったのですから、厳しい現実を受け入れる必要があります。アトレティコの守備網を破る光明が見当たらないのです。20日という時間では足りないと思われます。

 

 “帯に短し襷に長し” の状態を解消すれば、ある程度は戦えることでしょう。ただ、相応のリスクを負う覚悟が問われます。

 手堅い試合運びを念頭に置いた采配をするアッレグリ監督は「バランスを模索した」が、試合終盤にメッキが剥がれて 2-0 で敗れる結果となりました。アトレティコが雰囲気に飲まれて浮足立たない限り、逆転は不可能と言えるでしょう。