『プレミアム・スポルト』などイタリア・メディアが「ユベントスがBチームや女子チームがメインで使用するための新スタジアムの建設を考えている」と報じています。噂の段階ですが、状況を整理しておくことにしましょう。
ユベントスのトップチームはアリアンツ・スタジアムをホームとして利用していますが、Bチーム(= U-23)や女子チームにはホーム・スタジアムがない状況です。そのため、今季は以下のスタジアムを “間借り” する予定です。
- Bチーム:スタディオ・ジュゼッペ・モッカガッタ(アレッサンドリア)
- 女子チーム:スタディオ・シルヴィオ・ピオラ(ノヴァーラ)
アレッサンドリアとノヴァーラはどちらもトリノが属するピエモンテ州の都市ですが、トリノからは 100km ほどの距離があります。
スタジアム使用料の支払いに加え、ホームスタジアムとしては少し遠い(= 1時間ほどを要する)ため、新スタジアムの建設に向けて動く意味はあると言えるでしょう。
Bチームや女子チーム用の新スタジアム建設予定地は以下が想定されていると報じられています。
アリアンツ・スタジアムの西側に隣接する地域が『Jヴィレッジ』のあるコンティナッサ地区です。『Jヴィレッジ』の南に『パラトリノ(PalaTorino)』という屋内施設があり、ここに 5000〜6000 人規模のスタジアムを建設する動きがあると伝えられているのです。
『パラトリノ』は1990年に建設計画が持ち上がり、1994年に開場した多目的施設です。ただ、トリノ中心部からのアクセスが良くないことに加え、高い利用料とトリノ冬季五輪の再開発に取り残されたことにより、2011年に施設は閉鎖されています。
そのため、「コンティナッサ地区と同様にユベントスが活用するのでは?」との憶測が出ているのです。
ただ、ユベントス側が使用を希望しても、事態がスムーズに進行するかは不透明です。なぜなら、“塩漬け” になっている理由があるからです。
- 『パラトリノ』の所有者はトリノ市
- トリノ市はトーニ・グループ(Togni Group)に30年の管理権限を付与
→ 起点は1990年 - 「トリノ五輪の際に設立された『パラオリンピコ』によって、損害を被った」とトーニ・グループが行政訴訟を起こす
- 「『パラトリノ』の敷地もユベントスに譲渡されたコンティナッサ地区に含まれているのでは?」との指摘もあり
デッレ・アルピは1990年のイタリアW杯時に合わせて開場し、隣接地に『パラトリノ』を建設する計画が始動しました。
ところが、デッレ・アルピの状態があまりに劣悪だったこともあり、当時スタジアムを使用していたユベントスとトリノの両方から不満が噴出。2000年にユベントスとトリノ市の協議が終了し、スタジアム周辺の土地も含めて99年間はユベントス保有となりました。
トリノ市が所有するスタジアムや土地の所有権(登記上)を手放した理由は「1999年6月にトリノ冬季五輪が決定していた」という背景があります。
トリノ冬季五輪の開閉式会場はトリノがホームとして使用しているスタディオ・オリンピコです。市の中心部にある上、近隣地区に屋内施設を建設し、『パラオリンピコ』が運営に当たりました。そのため、デッレ・アルピ周辺の施設に運営費を充てる意味が(トリノ市には)なかったのです。
トーニ・グループが行政訴訟を起こした理由は「『パラトリノ』を建設した際に同業形態での参入はしないとの条件が反故にされた」というものです。この訴訟により、『パラトリノ』は経営状況が悪化。2011年の閉鎖へと追い込まれました。
なお、「当事者間での和解があった」との情報はなく、『パラトリノ』は現在も廃墟として放置され続けています。
ユベントスは「『パラトリノ』の跡地にバルセロナの “ミニ・エスタディ” に該当するスタジアムを作りたい」という希望を間違いなく保有していることでしょう。
候補地となる最適な土地もあるのですが、“いわくつき” である点がネックとなっています。「Bチームや女子チーム用の新スタジアム建設」がユベントスから正式発表されるまでには時間を要することが濃厚です。
まずは続報を気長に待つ必要があると思われます。