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VAR 導入に対する不満を解消するには TMO (ラグビー)やチャレンジ制度(NFL:アメフト)を参考とすべき

 イタリアでは VAR (ビデオ・アシスタント・レフリー)制度が 2017/18 シーズンから導入されましたが、早くも問題点が浮き彫りとなっています。

画像:物議をかもす VAR

 「VAR を使って誤審」という事態も発生しており、改善は必要と言えるでしょう。VAR 制度を取り巻く環境を確認しておきたいと思います。

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VAR が有効なツールなるかは審判員次第

 ユベントスは公式戦2試合で VAR が使われたプレーは3度でした。ただ、そのうちの1は明らかな誤審であり、これは審判員の(VAR を使いこなす)力量に大きな疑問符が付く結果となりました。

1:カリアリ戦(前半37分)

 カリアリ戦では前半37分にチョップ選手がアレックス・サンドロ選手に後ろからタックルされたシーンで VAR による検証が行われました。

画像:カリアリ戦で VAR が適応されたシーン
プレー 前半37分にチョップがA・サンドロに背後からボールを狙った左足タックルを受ける
判定 ノーファールでプレー続行
VAR タックルをしたA・サンドロがチョップの右足を踏んでおり、カリアリに PK が与えられる

 この VAR による判定は「正しかった」と言えるでしょう。

 ボールを突き出そうとクリアを狙ったプレーでしたが、エリア内で相手 FW の足を踏む結果となってしまいました。「意図的ではない」にせよ、足を踏みつけたことでプレーを妨害しており、PK を取られて文句の言えないプレーでした。

 

2:ジェノア戦(前半7分)

 物議をかもす結果となったのはジェノア対ユベントス戦の前半7分のプレーです。ガルビノフ選手がターラブト選手からパスを受けた際、ルガーニ選手からタックルを受け、倒された場面です。

画像:ジェノア戦で VAR が適応されたシーン1
プレー 前半7分、エリア内でボールを受けたガルビノフがルガーニに背後からタックルを受ける
判定 正当なチャージと判断され、ノーファール
VAR ルガーニがタックルではなく、ガルビノフの足を蹴っていたと判定。ジェノアに PK が与えられる

 「ルガーニ選手が(ガルビノフ選手の)足を蹴っていたか」という視点で見れば、VAR の判定は正しいです。しかし、ガルビノフ選手はターラブト選手からパスが出た時点でオフサイドポジションにおり、VAR 導入の目的に沿っていれば、PK はオフサイドで取り消しとなっていたはずです。

 「PK なし」のジャッジが VAR でオフサイド見逃された挙句、「PK あり」と判定が出るようでは制度に対する批判の声は大きくなることでしょう。

 

3:ジェノア戦(前半45分)

 ジェノア戦では前半45分にも、VAR が使われました。右サイドを抜け出したクアドラード選手の折り返しをマンジュキッチ選手がシュートし、それが CK になったシーンです。

画像:ジェノア戦で VAR が適応されたシーン2
プレー 前半45分、クアドラードのクロスをマンジュキッチがシュート。相手 DF に当たって CK
判定 マンジュキッチのシュートはラゾヴィッチの身体に当たってゴールラインを割った
VAR マンジュキッチのシュートはラゾヴィッチの左腕に当たってゴールラインを割っており、ユベントスに PK が与えられる

 これは VAR に期待されている精度が発揮されたプレーと言えるでしょう。至近距離から放たれたシュートは枠内を飛んでおり、ラゾヴィッチ選手の腕に当たっていなければ、ゴールになっていた可能性が高いからです。

 

VAR 導入で浮上した不満と対応策

 “完璧な制度” は現実には存在せず、一長一短があることが普通です。ただ、改善策を講じることはできますので、運用方法を改める必要はあると言えるでしょう。

 それでは実際に不満が出ている点や不満になる可能性がある点と改善策(案)を提示することにしましょう。

 

1:時間がかかる(=プレーが止まる)

 これはリプレー映像を検証する上で仕方のないことですが、VAR を利用する審判員の力量に左右されていることも事実と言えるでしょう。

 カリアリ戦を担当したマレスカ主審と VAR のバレリ審判のコンビは VAR を上手く活用できていました。マレスカ主審は VAR の利用を決断することに時間を要さなかったですし、判定を待つ選手たちからも待ち時間への苦情は出ていない状況でした。

 しかし、ジェノア戦を担当したバンティ主審と VAR のファッブリ審判のコンビはボロボロでした。

 「VAR で確認してから、主審も確認」という姿勢を採っていたこともあり、無駄な待ち時間ができていました。審判が確認のために試合を止めるなら、ラクビーの TMO (テレビジョン・マッチ・オフィシャル)のように主審が宣言し、確認に入るべきでしょう。

 

2:何の理由で試合が止まっているのかを観客が分からない可能性がある

 アリアンツ・スタジアムのように最新設備が整った試合会場なら、VAR でリプレー検証されているプレーを野球のメジャーリーグのように大型オーロラビジョンに映し出すことは可能でしょう。しかし、サンシーロなどではできないことです。

 そのため、現状では「試合が止まっている理由を観客が分からない」という状況になっているのです。

 これは NFL (アメフト)の審判が解決策になると思われます。チャレンジなどで試合が止まった後、審判が判定の説明をして試合を再開させるからです。ジェノア対ユベントス戦では次のように主審が宣告することが解決策と言えるでしょう。

  • オフサイド。オフェンス、No.14。ユベントスに間接 FK
  • ハンドボール。ディフェンス、No.22。ユベントスに PK

 VAR でも判定が覆らなければ、プレー再開を告げれば済む話です。運用という点で VAR は改善する必要があると思います。