チャンピオンズリーグ決勝でレアル・マドリードに 1-4 で敗れたユベントスですが、チーム力の差が如実に現れた結果と言えるでしょう。ただ、改善点は明確であるだけに “伸びシロ” になると考えられます。
1:サイドハーフの疲弊が顕著だった 4-2-3-1
ユベントスはフィオレンティーナ戦に敗れたことを受け、セリエA第21節ラツィオ戦(2017年1月22日)から 4-2-3-1 を採用しました。このシステムではサイドハーフに多大な負担がかかるため、ターンオーバーが不可欠になります。
しかし、それを満足に行えなかったことが勢いを失った原因と言えるでしょう。4月中旬に行われたバルセロナとの準々決勝がコンディション的なピークになっていたことは否定できません。
選手名 | 大会名 | 試 | 得点 | 時間 |
---|---|---|---|---|
クアドラード (出場時間率:64%) |
セリエA | 16 (14) | 2 (3) | 1169' |
UEFA CL | 7 (4) | (1) | 336' | |
イタリア杯 | 3 (2) | (3) | 224' | |
合計 | 26 (20) | 2 (7) | 1729' | |
イグアイン (出場時間率:97.1%) |
セリエA | 19 (18) | 11 (3) | 1646' |
UEFA CL | 7 (7) | 2 (1) | 615' | |
イタリア杯 | 4 (4) | 3 | 360' | |
合計 | 30 (29) | 16 (4) | 2621' | |
マンジュキッチ (出場時間率:84.2%) |
セリエA | 16 (15) | 3 (4) | 1373' |
UEFA CL | 7 (7) | 2 (1) | 630' | |
イタリア杯 | 3 (3) | 0 | 270' | |
合計 | 26 (25) | 5 (5) | 2273' | |
ディバラ (出場時間率:80.9%) |
セリエA | 19 (16) | 7 (5) | 1337' |
UEFA CL | 7 (7) | 3 | 542' | |
イタリア杯 | 4 (4) | 3 | 305' | |
合計 | 30 (27) | 13 (5) | 2184' | |
全試合 | 30 | ー | 2700' |
出場時間率が 80% を超えているのはイグアイン、マンジュキッチ、ディバラの3選手。これがどのぐらいの数値であるかはターンオーバーを上手く実施したレアル・マドリードと比較する必要があります。
2:レアルの攻撃陣で出場時間率が8割を超えたのはロナウドだけ
一方のレアルは選手を上手く休ませた上で結果を残したと言えます。
選手名 | 大会名 | 試 | 得点 | 時間 |
---|---|---|---|---|
ロナウド (出場時間率:82.3%) |
リーガ | 16 (16) | 13 (4) | 1423' |
UEFA CL | 7 (7) | 10 (2) | 660' | |
国王杯 | 1 (1) | 1 | 90' | |
合計 | 24 (24) | 24 (6) | 2173' | |
ベンゼマ (出場時間率:65.2%) |
リーガ | 16 (13) | 6 (3) | 1095' |
UEFA CL | 7 (7) | 1 (1) | 535' | |
国王杯 | 1 (1) | (1) | 90' | |
合計 | 24 (21) | 7 (5) | 1720' | |
ベイル (出場時間率:23.7%) |
リーガ | 8 (6) | 2 (1) | 485' |
UEFA CL | 3 (2) | 0 | 140' | |
合計 | 11 (8) | 2 (1) | 625' | |
イスコ (出場時間率:50%) |
リーガ | 17 (9) | 6 (6) | 920' |
UEFA CL | 5 (4) | 1 | 319' | |
国王杯 | 1 (1) | 0 | 80' | |
合計 | 23 (14) | 7 (6) | 1319' | |
全試合 | 29 | ー | 2640' |
レアルはコパ・デル・レイで勝ち残っていれば、ユベントス以上の試合数を戦う必要がありました。しかし、ユベントスがセリエA第21節を戦った1月21日以降にレアルが戦った試合は29試合。ユベントスとほぼ同じ時間を戦っているのです。
その中で最も出場時間が多かったのはロナウドの 82.3%。出場時間はディバラと変わらないのですが、出場した試合はほぼフル出場であり、メリハリがつけられた起用たっだと言えるはずです。
3:控えの攻撃的選手による出場時間にすべてが濃縮されている
レアルに軍配があがった最大の要因は「控えの攻撃的選手の質」と言えるでしょう。それは出場時間に如実に現れています。
選手名 | 大会名 | 試 | 得点 | 時間 |
---|---|---|---|---|
ストゥラーロ (出場時間率:20.8%) |
セリエA | 9 (6) | 0 | 476' |
イタリア杯 | 1 (1) | (1) | 86' | |
合計 | 10 (7) | (1) | 562' | |
ピアツァ (出場時間率:16.4%) |
セリエA | 8 (3) | 0 | 369' |
UEFA CL | 2 | 1 | 68' | |
イタリア杯 | 1 | 0 | 6' | |
合計 | 11 (3) | 1 | 443' | |
レミナ (出場時間率:11.7%) |
セリエA | 9 (2) | 1 | 263' |
UEFA CL | 4 | 0 | 36' | |
イタリア杯 | 2 | 0 | 16' | |
合計 | 15 (2) | 1 | 315' | |
D・アウベス (出場時間率:55%) |
セリエA | 11 (8) | 1 (2) | 747' |
UEFA CL | 7 (6) | 2 (2) | 557' | |
イタリア杯 | 2 (2) | 1 | 180' | |
合計 | 20 (16) | 4 (4) | 1484' | |
全試合 | 30 | ー | 2700' | |
バスケス (出場時間率:36.7%) |
リーガ | 19 (8) | 2 (5) | 843' |
UEFA CL | 5 | (1) | 111' | |
国王杯 | 1 | 1 | 14' | |
合計 | 25 (8) | 3 (6) | 968' | |
ハメス (出場時間率:31.9%) |
リーガ | 13 (9) | 7 (3) | 759' |
UEFA CL | 2 (1) | 0 | 83' | |
合計 | 15 (10) | 7 (3) | 842' | |
アセンシオ (出場時間率:30.4%) |
リーガ | 11 (6) | 1 (2) | 596' |
UEFA CL | 5 | 2 | 131' | |
国王杯 | 1 (1) | 0 | 76' | |
合計 | 17 (7) | 3 (2) | 803' | |
モラタ (出場時間率:28.1%) |
リーガ | 14 (8) | 10 (2) | 707' |
UEFA CL | 4 | 1 | 25' | |
国王杯 | 1 | 0 | 10' | |
合計 | 19 (8) | 11 (2) | 742' | |
全試合 | 29 | ー | 2640' |
サイドハーフを務めたユベントスの控え選手の出場時間率は 10〜20 %。右 SB として出場時間を積み重ねたダニ・アウベスは例外的ですが、30% 前後の出場時間率を記録したレアルの選手とは大きな差があります。
「ポジションを任せる選手がいなかった」と言えば、それまでです。しかし、来シーズンも 4-2-3-1 が戦術オプションになる可能性が大いにあることを考えると、重要な補強ポイントになります。
4:「最低でも出場時間率 30% 前後を任せられるサイドハーフ」か「スピードのあるサイドバック」が補強候補
悲願のビッグイヤーを獲得するには選手層の偏りを是正する必要があります。ボランチを本職とする選手が8選手と多く、攻撃的なサイドハーフを本職とする選手と入れ替えることが求められます。
レアルのターンオーバーを参考にするなら、守備のタスクが軽いディバラの出場時間率は 85% が目安となるでしょう。騙し騙しで出場時間を積み重ねるのではなく、内容の濃いパフォーマンスが期待されますし、キレが求められるからです。
サイドハーフでは 65〜70 % が現実的な数値ではないでしょうか。80% に近くほど、疲労の蓄積によって運動量が落ちている印象が強くなるため、“選手を休ませるだけの実力者” を選手層に加えることが必要になるはずです。
スピードのあるサイドバックはチャンピオンズリーグを勝つためには不可欠です。正確なキックで右サイドバックの裏のスペースを狙い撃ちにされることがファイナルに近づくほど多くなっており、ダニ・アウベス選手だけが信頼されている状況は改善すべきと言えるからです。
とは言え、アッレグリ監督が来季以降もユベントスの指揮を取ることが大前提です。監督が変われば、システムも変更されることが一般的であり、補強ポイントが大きく変わるからです。
まずはアッレグリ監督との契約延長交渉が合意に達するかが注目点です。その上でユベントスが夏の移籍市場でどのように振る舞うのかを追いかける必要があります。