会計法人『デロイト』が毎年恒例となっているフットボール・マネーリーグの2017年版(PDF)を公表しました。ユベントスは前年と同じ10位にランクインしています。
チーム名 | 売上高(単位:百万ユーロ) | ||
---|---|---|---|
15/16 | 14/15 | ||
1 | マンチェスター・U | 689 | 519.5 |
2 | バルセロナ | 620.2 | 560.8 |
3 | レアル・マドリード | 620.1 | 577 |
4 | バイエルン・ミュンヘン | 592 | 474 |
5 | マンチェスター・C | 524.9 | 463.5 |
6 | パリ・サンジェルマン | 520.9 | 480.8 |
7 | アーセナル | 468.5 | 435.5 |
8 | チェルシー | 447.4 | 420 |
9 | リバプール | 403.8 | 391.8 |
10 | ユベントス | 341.1 | 323.9 |
トップ10の顔ぶれは2016年から変化はありません。ユベントスは売上高を伸ばし、9位にランクインするリバプールとの差を詰めることには成功しました。
しかし、欧州トップとの差は大きく開いた現実に目を向ける必要があります。特に、マンチェスター・ユナイテッドが驚異的な売上高を記録した理由を分析し、参考にできる点は参考にする必要があると言えるでしょう。
1:ユベントスの売上高推移
ユベントスが記録した過去3シーズンの売上高における構成比率の以下のように推移しています。
チャンピオンズリーグで決勝進出し、国内2冠を達成した 2014/15 シーズンと比較すると、マッチデー収入と放映権収入が減少しました。
ただ、このマイナス分は予想が可能だった分であり、スポンサー収入の増加分でどれだけ補うことができるかが鍵でした。その点ではアディダスとのユニフォーム・サプライヤー契約などが売上高UPに貢献したと言えるでしょう。
2:マッチデー収入は(実質的に)頭打ち
クラブにとって売上高に占める主要項目であるマッチデー収入ですが、ユベントスは実質的に頭打ちになっていると言えるはずです。
チーム名 | 売上高(単位:百万ユーロ) | ||
---|---|---|---|
15/16 | 14/15 | ||
1 | マンチェスター・U | 137.5 | 114 |
2 | アーセナル | 133.6 | 132 |
3 | レアル・マドリード | 129 | 129.8 |
4 | バルセロナ | 121.4 | 116.9 |
5 | バイエルン・ミュンヘン | 101.8 | 89.8 |
6 | チェルシー | 93.2 | 93.1 |
7 | パリ・サンジェルマン | 92.5 | 78 |
8 | リバプール | 75.9 | 75 |
9 | マンチェスター・C | 70.2 | 57 |
10 | ドルトムント | 61.1 | 54.2 |
11 | トッテナム | 54.6 | 54.2 |
12 | シャルケ04 | 51.2 | 39.2 |
13 | ユベントス | 43.7 | 51.4 |
「収容可能人数の大きいスタジアム」で、「高額なチケット代」を設定すれば、マッチデー収入の上限をあげることは可能です。しかし、経営戦略的にはリスクが高くなります。
ユベントス・スタジアムはソールドアウト状態が続いており、チケット代もチャンピオンズリーグの価格設定が高すぎるとの抗議が起きた状況です。また、スタジアム拡張の話も現時点では存在しません。そのため、この分野での大きな収入増はあまり現実的ではありません。
VIPルームを拡張するなど、観客が費やす単価をアップする効果的な戦略が必要になると思われます。
3:放映権収入にも限界はある
プレミアリーグの高額な放映権料が話題になりましたが、ヨーロッパ主要クラブの放映権収入という観点ではそれほど格差は広がっていないことが現実です。
チーム名 | 売上高(単位:百万ユーロ) | ||
---|---|---|---|
15/16 | 14/15 | ||
1 | レアル・マドリード | 227.7 | 199.9 |
2 | マンチェスター・C | 215.8 | 178 |
3 | バルセロナ | 202.7 | 199.8 |
4 | ユベントス | 195.7 | 199 |
5 | アーセナル | 192 | 167.7 |
6 | チェルシー | 191.1 | 178.2 |
7 | マンチェスター・U | 187.7 | 141.6 |
8 | リバプール | 168.1 | 163.8 |
9 | ASローマ | 154 | 114 |
10 | バイエルン・ミュンヘン | 147.6 | 106.1 |
10 | トッテナム | 147.6 | 125.2 |
放映権を最も稼ぐクラブで年間2億ユーロ前後。多額の収入であることに間違いはないのですが、その金額が “天井” になっていることを考えると「放映権頼りの経営」から脱却することが求められることになります。
4:スポンサー収入はバカにできない
スポンサーなど商業収入をバカにすることはできません。マンチェスター・ユナイテッドとバイエルン・ミュンヘンがスポンサー収入で得た金額はユベントスの売上高を上回っているからです。
チーム名 | 売上高(単位:百万ユーロ) | ||
---|---|---|---|
15/16 | 14/15 | ||
1 | マンチェスター・U | 363.8 | 263.9 |
2 | バイエルン・ミュンヘン | 342.6 | 278.1 |
3 | パリ・サンジェルマン | 305.3 | 297 |
4 | バルセロナ | 296.1 | 244.1 |
5 | レアル・マドリード | 263.4 | 247.3 |
6 | マンチェスター・C | 238.9 | 228.5 |
7 | チェルシー | 163.1 | 148.7 |
8 | リバプール | 159.8 | 153 |
9 | ゼニト | 145.8 | ー |
10 | アーセナル | 142.9 | 135.8 |
11 | ドルトムント | 140.2 | 144.3 |
12 | ユベントス | 101.7 | 73.5 |
「ヨーロッパ10位の売上高」を上回る “スポンサー収入” を獲得しているクラブが2つも存在しているのです。
この点を考慮しても、良い形でのスポンサー契約の得ることに本腰を入れる必要は大いにあるでしょう。ブランド力がある、露出度が高い、熱心なファンが大勢いるという要素を兼ね備えているクラブほど良い契約内容を引き出すことができるのです。
まずは「放映権収入(約2億ユーロ)と同額のスポンサー収入を得ること」が目標と言えるでしょう。これを達成するため、ブランド展開を含め、どのようなアプローチをユベントスの経営陣が採るかに注目です。