スウェーデンの陸上チームの元コーチであるウルフ・カールソン(Ulf Karlsson)氏が「イブラはユーヴェでドーピングしていたとしか思えない」とメディアに語り、騒動が起きていると『スポーツ・ブラデット』が報じています。
ウルフ・カールソン氏:
「以前、彼は禁止される前にパフォーマンス向上薬を摂取したことがあることを認めています。ドーピングは個人というより、チーム規模で行われているのです。
彼らのドーピングテストは他の選手たちよりも免除されているのです。イブラヒモビッチはユベントスに所属していた時、わずか6ヶ月で体重を10キロも増やしました。このような短期間で行うことは不可能なことです。
また、アルビン・エクダルも同じチームで体重を8キロ増やしました。私はその文化がユベントスに根付いていたと信じています。彼らは22ヶ月の有罪判決が下った医師を雇用していたのです。
注)該当の医師は控訴審では無罪となっている
ーー あなたが長期に渡って思っていたことですか?
いえ、私達はスポーツとドーピングの負の側面に対する議論を行ってきました。2000年代初頭のユベントスで何が起きていたのかを強調したのです。
ズラタン個人を告発することは残念に思います。私の声明はチームスポーツでのドーピングについての議論を促す目的を持ったものなのです」
カールソン氏の発言のどこが反発を招くのかと言いますと、一切の証拠が提示されていないことでしょう。むしろドーピング問題で逆境に立たされているのはカールソン氏が深く関わってきた陸上界の方であり、より知名度の高いサッカー選手をスケープゴートにしているとしか思えません。
イブラヒモビッチ選手の身長は 195cm、エクダル選手は 186cm と長身選手です。このような体格を持った選手が半年で体重を10キロ前後増やしたことがドーピングなら、日本のプロ野球界にはドーピングに手を染めた選手がわんさか存在することになってしまいます。
ダルビッシュ投手、大谷投手、藤浪投手などは「オフ期間の肉体改造」として数ヶ月で10キロ弱は増量しています。サプリメントの摂取も含めた食事とウエイトトレーニングがその根幹になっているのですが、その知識すら持ち合わせていない代表コーチの方が問題と見るべきでしょう。
また、ユースチームからの昇格したばかりの選手やフィジカル的にタフではないリーグ出身選手には “身体の線が細すぎる” という特徴があります。
ちなみに、今季ユベントスの攻撃陣を牽引しているディバラ選手のパレルモ時代の体重は 69 キロでした。それがユベントスで 73 キロにまで増えているのですが、これもドーピングによるものだとカールソン氏は言いたいのでしょうか。
このカールソン氏の発言に対し、反発の声が各所であがっています。その一部を紹介します。
ニコラス・ボデル氏(スウェーデンサッカー協会広報):
「私がウルフ・カールソンの立場であれば、本来の目的のために慎重に行動しますね。これが私の本音です。
具体的な証拠もなく、ただ憶測を述べることは非常に驚きですし、驚くべきことでしょう。私は推測やカールソンの主張に触れたくないのですが、私の耳には荒唐無稽に聞こえます」
アルネ・ヤングビスト氏(WADA 元副会長):
「私は人々の憶測にはコメントしません。テストで陽性反応が出るか、証拠が提示されるまで私の姿勢が変わることはありません。何か他のものが調査をする私達に適用されることはないでしょう。証拠を作らなければならないのですから」
ミーノ・ライオラ氏(イブラヒモビッチ選手の代理人):
「訴えることになるだろう。我々には根拠があるからだ。私はスウェーデンの法律の専門家ではないが、我々にはスウェーデンの弁護士がいる。
おそらく、彼は成功しなかった元アスリートで、嫉妬しているのだろう。だが、彼は重大な過ちを犯した。声明の前に送っていた生活は別のものになるはずだ。彼は嘘を広めているのだから。
ズラタンがユベントスに在籍していた時、彼は少なくとも20回以上のドーピングテストを受けている。ユベントスの選手は常に監視下にあったのだから、これほど馬鹿げたことはない。
(カールソンの主張を裏付ける)証拠はなく、我々は声明が誤りであったと証明することができるのです。ズラタンは彼がプレーしたどのクラブでもアスピリンのようなものを摂取したことはないし、彼はプレーですべてを勝ち取ってきた。
彼は落ち着いているよ。むしろ今夜 PK を失敗したことの方を恥じているだろうね。彼は私にこれらの主張に反応する気はないと言っていますよ」
イブラヒモビッチ選手はドーピングテストで1度も陽性反応が出たことはありません。CF でプレーするには相応のフィジカルが要求されるのですが、そのために体重を増やしたことは不自然でもありません。
憶測での発言が許されるのなら、カールソン氏が率いていたであろうスウェーデン陸上長距離界の方がドーピングが蔓延しているはずです。まず厳しい視線を向けるのは自身の元職場との指摘に、真摯に向き合うことがカールソン氏には求められていると言えるのではないでしょうか。